1960年代から70年代にかけて、松竹ヌーヴェル・ヴァーグやATG映画の旗手として実験精神の高い作品を次々と発表し、その名を知らしめた鬼才・吉田喜重監督が、痴呆性老人問題に真正面から取り組んだ骨太の社会派人間ドラマ。テーマがテーマだけに重苦しくなりかねない題材を、あくまでも透明感あふれる演出で貫きとおすことで、逆に問題提起を強く打ち出すことに成功している力作である。音楽は細野晴臣が担当。(的田也寸志)