日本資本主義の哲学―ニッポン・スタンダード 4569623166 PHP研究所
■Amazonエディターレビュー 日本の金融や経済、経営の問題点を鋭い視点でえぐり出してきた木村剛が、ルールや正義が失われてきているという日本資本主義の現状を、3つの観点から浮き彫りにしている。 その1つめは、不良債権処理をめぐるもの。著者は、「銀行は大手問題企業には十分な引当金を積まずに債権放棄をしながら中小企業の『貸し剥がし』まで行っている」「官僚は『外資=ハイエナ論』をつくり上げてそうした金融機関を守っている」「債権放棄で身軽になった大手問題企業は、マーケットでディスカウントを仕掛けている」などと批判し、「大失敗した大企業が生き残り、中小企業は淘汰される。真っ当に頑張った人が勝ち残れない。これはどう考えても真っ当な資本主義ではない」と憤る。 2つめは、企業経営について。著者は、かつては組織という共同体維持のために自ら犠牲を払ってきた経営者が、リストラなどで責任を他に押しつけるようになり、「経営者の本性」丸出しの資本主義に陥っていると指摘している。 3つめは、資本主義の原理に関するもの。資本主義精神の発展とともに生まれたミッション、あるいは「ルールの束」が失われてしまい、やがて「資本の本性」の制御が効かなくなり、暴力的な「ジャングル資本主義」に陥ってしまう危険性をここで指摘している。 最終的に著者は、資本主義の「ニッポン・スタンダード」をつくるのが解決策だとして、アメリカ流とも異なる「自律」「互助」などを軸にしたコンセプトを提案している。 「日本資本主義の再定義」というスケールの大きな試みがなされた1冊であり、読みごたえがある。「ルールを守れ」という強く明快な著者の訴えが、日本経済を見通す一貫した視座を与えてくれるのではないだろうか。(棚上 勉) |