また、今回はあえて原作と異なる犯人を設定し、市川監督版シリーズ独自の、なぜ犯人が犯行に及んだのか、という哀しい人生模様の色を出すことにも成功している。またシリーズ3作目ともなると、脇を固める常連キャストの演技も、それぞれ一段と味わい深くなっており、それがまた魅力を深めるポイントになっている。(的田也寸志)
名探偵・金田一耕助は、なんと生首の現場におもむいた際に、犯人は誰であるかを見抜いており、その模様は映像でもきちんと描かれているので、目をこらして観てもらいたい。また本作は金田一最後の事件であり、原作ではおよそ28年にも及んでの事件解決となるのだが、映画化に際しては、それを数か月に凝縮している。
横溝夫妻も冒頭とラストで特別出演し、シリーズの終えんをねぎらってくれているのがうれしい。シリーズ常連キャストも、それぞれ名演。特に『無法松の一生』さながらのいでたちと雰囲気で迫る小林昭二がすばらしい。(的田也寸志)